<< Back to MOTIFvations Blog Home Page

完全ガイド:ゲノムワイドなDNAメチル化解析 Reduced Representation Bisulfite Sequencing (RRBS)の理解と使用法

RRBS
 

By Anne-Sophie Ay-Berthomieu, Ph.D.

 June 14, 2019

DNAメチル化は、最も重要なエピジェネティックな修飾の1つで、非常に多くの生物学的プロセス調節に寄与し、多くのヒトの疾患にも関与しています。

DNAメチル化を研究する方法はたくさんありますが、最適な方法は実験の目的によって異なります。多くの研究者は、メチル化されているシトシン残基を正確に特定したり、サンプル間でのメチル化のレベルを定量的に比較したいと考えています。

このような目的で行われる実験のひとつは、全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS; Whole Genome Bisulfite Sequencing)です。これにより、全ゲノムにわたる単一ヌクレオチド分解能のDNAメチル化解析が可能になります。しかし、全ゲノムアッセイのシーケンシングとバイオインフォマティクスに必要な時間とコストが非常に高いため、多くの研究者は、ゲノムワイドなDNAメチル化アッセイのためにReduced Representation Bisulfite Sequencing (RRBS)と呼ばれる方法に目を向けています。

Reduced Representation Bisulfite Sequencing (RRBS)とは?

Reduced Representation Bisulfite Sequencing (RRBS) は、単一ヌクレオチドの解像度でゲノムワイドにDNAメチル化を研究する方法です。RRBSは、バイサルファイト変換シーケンス法のバリエーションのひとつで、制限酵素消化とDNAサイズ選択を組み合わせて、DNAメチル化の多くが存在するゲノム領域に集中してシーケンスを行う方法です。このことにより、WGBSよりも低いDNAシーケンシングコストでゲノム全体にわたるDNAメチル化データを得ることができます。

RRBSの歴史

RRBSは、Whitehead Institute for Biomedical ResearchのRudolf Jaenisch研究室においてAlex Meissner(現 Max Plank Institute)と同僚らにより、2005年にNucleic Acid Research誌に初めて発表されました。彼らの目標は、ゲノム全体にわたり高解像度でメチル化されたDNAを解析する手法を開発することでした。

Jaenischグループの研究者らは、この技術の正確さをチェックするため、DNAメチルトランスフェラーゼDnmt3aおよび3bを欠損したマウスES細胞、およびDnmt1のレベルがノックダウンされたマウスES細胞のメチローム(DNAのシトシンのメチル化状態)を比較しました。彼らは、ゲノムDNAを消化するために、DNAメチル化非感受性の制限酵素としてBglIIを使用しました。DNA断片のサイズ選択を実行して500〜600 bpの長さの断片を単離した後、これらのDNA断片をライブラリーにクローニングしてシーケンシングを行いました。最初の報告では、研究者はサンガーシーケンス技術を使用してDNAをシーケンスしました(これはNGSが登場する前でした!)。

さらに何年にもわたって、RRBSの方法とプロトコルは進化し、改善されてきました。まず、BglIIを使用する代わりに、MspI制限酵素を使用して制限酵素によるCpG濃縮を実行し、より多くのCpG部位をカバーすることができるようになりました。一部のグループは、さらに優れたカバレッジを得るために、いくつか追加の制限酵素を使用した例を報告しています。DNAシーケンシング技術の進歩により、サンガー法によるシーケンシングは次世代シーケンシング(NGS)に置き換えられ、2011年には、Alex Meissnerのグループは、NGSを使ったRRBSの新しいプロトコルを公開しました。2015年、RRBS法は、シングルセルレベルのDNAメチル化解析にも採用され、不均一な細胞集団におけるエピゲノムの研究が進みました。

RRBS法は、現在、数百の査読付きジャーナルにおいて利用され公開されています。これまで、インパクトファクターの高いジャーナルで報告されたいくつかの研究において、赤血球生成ハンチントン病、およびB細胞の活性化におけるDNAメチル化の重要な役割を裏付けています。

ゲノムのどの領域がRRBSの解析対象か?

RRBSの原理は、コストを削減するために、ゲノム全体ではなく、DNAメチル化の主要部位であるCpGジヌクレオチドを含むゲノムの領域にカバレッジを集中させることです。

CpGアイランド(CGI)は、メチル化の標的となるため、転写の調節に重要な役割を果たすCpGジヌクレオチドの割合が高いゲノム領域です。CGIはプロモーターや第一エクソンの近くまたはプロモーター内部に位置することが多く(プロモーターの約70%がCGIを持っている)、CGIのメチル化は遺伝子発現の調節に関与する主要なメカニズムのひとつです。

RRBS法の優れている点は、特定の制限酵素消化とサイズセレクションをすることにより、ゲノムの~3%をシーケンスすることで、ヒトCGIの約80%と、ヒトプロモーターの50%以上のDNAメチル化データを、単一ヌクレオチド解像度でカバーできることです。ゲノムのカバレッジをさらに改善するために、2つ以上のエンドヌクレアーゼまたは異なるサイズのセレクションを行うことも可能です。

RRBSの仕組み

RRBSプロトコルには多くの重要なステップがあり、それぞれに最適化が必要です。また、さまざまな目的、生物、またはサンプルタイプに最適化された、いくつかの特殊なRRBSプロトコルがありますが、標準プロトコルについて以下に説明します。

標準RRBSプロトコル

  1. 消化:  ゲノムDNAを精製後、RRBSプロトコルの最初のステップは制限酵素消化です。RRBSで使用される最も一般的な制限酵素はMspIです。
  2. End Repair&Adapter Ligation: ゲノムDNAを消化した後、5’CGオーバーハングが修復され、Aテールが追加されます。アダプターには3’-Tオーバーハングが含まれているため、イルミナアダプターのライゲーションの前にテーリングが必須です。アダプターオリゴはメチル化シトシンを持っている必要があるため、あとのバイサルファイト変換(ステップ4)ではウラシルに変換されません。
  3. サイズの選択: アダプターがライゲーションされると、DNAがアガロースゲルにロードされ、バイサルファイト変換のために40〜120 bpおよび120〜220bpの長さのフラグメントが分離されます。サイズ選択の方法はプロトコルによって異なります。
  4. バイサルファイト変換: バイサルファイト変換は、メチル化されていないシトシンを脱アミノ化し、解析で最終的にチミジンとして読み取られるウラシルに変換します。メチル化されたシトシンはバイサルファイト変換から保護されているため、解析ではシトシンとして読み取られます。
  5. PCR増幅: バイサルファイト変換されたDNAは、シーケンシングの前にPCRによって増幅されます。
  6. シーケンシング: 次世代シーケンシングは、増幅されたライブラリーで実行されます。最も一般的なRRBSワークフローは、イルミナNGSプラットフォームを使用します。
  7. バイオインフォマティクス: シーケンスが完了したら、RRBSプロトコルの最後のステップは、配列のアラインメントとメチル化の同定などのバイオインフォマティクス解析です。

最近のRRBSアプリケーション

DNAメチル化は、遺伝子発現の調節に関与する重要なメカニズムです。このタイプのエピジェネティックな調節は、がん、神経変性疾患、老化、免疫疾患など、いくつかのヒト疾患で変化することが知られています。これらの疾患を研究するためにRRBSがどのように使用されてきたか、いくつかの例を紹介します。

RRBSによるがん研究の推進

固形腫瘍に対して実施されたRRBSでは、正常組織と比較して腫瘍におけるDNAメチル化パターンの変化が示されました。たとえば、口腔がんでは、miR-503、miR-200a/b、miR-320b、miR-489の高メチル化が5年生存率の低下と関連していました。

胃がんでは、消化管ホルモン受容体の過剰なメチル化は、ヒトサンプルにおける胃がんの発生・進行度と関連しています。結腸直腸がんについても同様の観察がなされており、高度メチル化CpG部位の組み合わせが、がんの進行度と相関しているとの報告があります。

乳がんは異なるメチローム様式を示すことも観察されており、DNAメチル化パターンによって乳がんサンプルをクラスター化することができます。

他にも、ナチュラルキラー細胞リンパ腫では、RRBSにより腫瘍抑制因子の過剰メチル化が起こることが報告されています。

がんではしばしば遺伝子発現調節の不全がおこっているため、RRBS法によりDNAメチル化パータンを研究することは、発がんに関連するエピジェネティックな変化を調べるための強力な手法のひとつとなります。

神経科学におけるRRBSアプリケーション

ハンチントン病(HD; Huntington’s disese)は進行性の脳障害であり、不随意運動や感情コントロールの障害、思考能力の低下を引き起こします。HDは、ハンチンチン(Htt; Huntingtin)タンパク質をコードする遺伝子の突然変異によって引き起こされます。ハンチンチン遺伝子(Htt)の変異は通常、グルタミンをコードする塩基配列CAGの反復の伸長であり、ハンチンチンタンパク質に長いポリグルタミンが含まれるようになります。ハンチンチン遺伝子に変異がある場合と、ない場合における線条体ニューロンのRRBS解析 は、神経活動依存的にメチル化状態の変化することが知られていたCpGの少ない領域において、不均衡に影響を受けることを明らかにしました。

21番染色体異常型のダウン症(DS; Down syndrome)は、21番染色体のコピー数が3つあることにより引き起こされる遺伝性疾患です。ダウン症患者由来サンプルのRRBS分析により、すべての常染色体において過剰にメチル化されるパターンが明らかになりました。同様の高メチル化パターンはDSの胎盤およびDS成人由来のPBMCサンプルでも観察され、DNAの過剰メチル化がダウン症発症の初期の事象であることを示唆しています。

RRBSによる免疫学と免疫応答の研究

免疫系は、多くの病気に対する防御機構であるだけでなく、自己免疫疾患や炎症性疾患など、多くの重要なヒト疾患にも関与しています。嚢胞性線維症サンプルから得られたマクロファージでは、RRBSにより、この疾患の特徴であるオートファジー活性を低下させるAtg12プロモーターの高メチル化があることを 特定しました 。

さらに、赤血球の成熟過程では、分化の全過程を通じてゲノム全体にわたる急速な脱メチル化がRRBSによって観察されました。グローバルなDNA脱メチル化は、多くの種類のがんで観察されており、一部の細胞型の正常な発達過程でも発生するという観察は、このメカニズムが重要であることを示唆しています。そして、赤血球の分化モデルにより、研究者はこの現象をよりよく研究できる可能性があります。

RRBSによる糖尿病研究

糖尿病は、世界的に大きな公衆衛生上の問題です。研究者らは、肥満が筋細胞のエピゲノムを変化させSORBS3を含む特定の遺伝子の転写調節を変化させて、肥満患者の骨格筋構造の変化に寄与することをRRBSを使用して実証しました。

妊娠糖尿病マウスモデルでは、RRBSは子孫の膵臓におけるDNAメチル化パターンの変化に差があることを明らかにし、多くの特異的にメチル化された遺伝子が糖脂質代謝および関連するシグナル伝達経路に関与していることを示しました。


最近、糖尿病の専門家であるJean-SébastienAnnicotte博士に会い、糖尿病と肥満におけるエピジェネティクスの役割についてお話しお聞きしました(Podcastをお楽しみください)


RRBSを使用したDNAメチル化と老化の関連性の研究

DNAメチル化パターンの変化は加齢と強く関連しており、メイヨークリニックの研究者らは、RRBSを使用して、骨髄間葉系細胞の1528標的遺伝子のプロモーターにおける若年者と高齢者の間でメチル化に有意差があることを観察しています。

ノルウェーの研究者はまた、RRBSを使用して、2歳、10歳 、16歳の患者から採取した血液サンプルの加齢に伴うDNAメチル化の変化を特定しました。これらの調査結果は、エピジェネティクスが通常の加齢プロセスにどのように寄与するかを理解するのに役立ちます。最終的には、加齢に伴う病気につながる可能性のあるエピジェネティックな変化を特定できると期待されます。

RRBSを始めるのは簡単です

アクティブ・モティフは、エピジェネティックな研究をサポートする製品とサービスを20年以上提供しており、サンプル調製から解析まで一貫して行う完全なend-to-endのRRBS受託解析サービスを行っています。研究者は、凍結細胞または組織(FFPE組織を含む)または精製DNAを提出するだけで、あとはアクティブ・モティフの専門家チームが、NGS、バイオインフォマティクス、およびすべてのQCステップを含むRRBSワークフローのすべてのステップを実行し、必要に応じてトラブルシューティングを行います。

当社のバイオインフォマティクス解析では、生データ(FASTQ)出力ファイル、アラインメントデータ(BAM)ファイル、およびデータを可視化したファイルを提供します。BAMファイルは、IGV(Integrated Genome Viewer)およびその他のゲノムブラウザーで表示するためにアップロードできる形式です。さらに、データ可視化ファイルとして、各CpGのメチル化率の値を含むメチル化テーブル、差異メチル化分析、およびカバレッジ深度分析、ヒートマップ、円グラフが提供されます。

研究者自身でRRBSを実施することもできますが、酵素消化、ライブラリー調製、サイズ選択、バイサルファイト変換など、プロトコルの大部分のステップを最適化して、信頼できるデータを得る必要があります。またRRBSワークフローの各ステップでは、シーケンス結果が良好であることを確認するために、関連する品質管理も必要です。最も難しいステップは、RRBSで生成される大量のデータのバイオインフォマティクス解析です。不正確な解析は、偽陽性や偽陰性の結果を招き、信頼できないデータになってしまいます。アクティブ・モティフによる受託解析は、これらのことを心配をせずに実施できます。

まとめ:RRBS法は、DNAメチル化解析からより多くの情報を求めている研究者にとって優れた解析方法です。

DNAメチル化の解析にはさまざまな手法が存在し、それぞれに独自の利点があります。多くの研究者は、比較的安価なイルミナのDNAメチル化アレイを5-mCの解析に使用しています。しかし、アレイでは、特定の疾患モデルや実験系に固有の新しいDNAメチル化部位を発見することはできません。またヒトやマウスのサンプル以外には互換性がないため、これら以外のモデル生物を利用する多くの研究者はアレイを利用できません。

RRBSは、少量のDNA、FFPEサンプルといったサンプル量が少ない場合も対応可能です。さらに単一の塩基対分解能でゲノム全体のDNAメチル化レベルを分析することが可能であることから、イルミナアレイよりもはるかに多くのメチル化サイトをカバーすることができます。

したがって、DNAメチル化研究からより多くのものを求めている研究者は、RRBSやWGBSなどのNGSベースの方法を使用しています。また、DNAシーケンシングのコストの低下は、シーケンシングベースのアプローチをより魅力的にしています。DNAメチル化を調べるためのゲノムワイドなNGSベースのアプローチは、将来的には研究者が選ぶべき手法となる可能性が高く、すでに多くの研究者がRRBSを利用するようになってきています。

RRBSの詳細、サービスの概要の説明、または見積もりのご希望は、お気軽にお問い合わせください


About the author

Anne-Sophie Ay-Berthomieu

Anne-Sophie Ay-Berthomieu, Ph.D.

Anne-Sophieは南フランスで生まれ、地中海とピレネー山脈の間で育ちました。彼女は空想科学小説のファンとして育ち、フランスのリヨン大学の大学院で分子生物学と遺伝学を専門とするようになりました(彼女の研究が彼女に超能力を与えることを密かに望んでいます!)。仕事のためにさまざまな場所に住んだ後、彼女はフランスのリヨンに戻り、夫、家族、友人とともに時間を過ごしています。余暇には、力があり余った子供が成長するのを見守りながら、ハイキング、登山、レース、海外旅行に挑戦しています。

質問がある場合、またはあなたの超能力について彼女と話したいときには、LinkedInのAnne-Sophieに連絡してみてください。


What are your favorite recent epigenetics breakthroughs? We’d love to hear from you! Please contact us at blog@activemotif.com or on Twitter (@activemotif) to share your thoughts and feedback! We’re also looking for science writers to contribute to MOTIFvations, so if you’re an established science communicator or just want to get started, please reach out – there might be a story we can collaborate on!


Related Articles

Complete Guide to Understanding and Using ATAC-Seq

ATAC-Seq

February 9, 2021
The ATAC-Seq method was just published in 2013 and it has already become one of the most common and powerful ways to study chromatin states on a genome-wide level. This article covers what ATAC-Seq is and how to use it in your research.

Read More

Using RIME to Analyze Protein-Protein Interactions on Chromatin

RIME protein-protein interactions

September 3, 2019
There are many methods for detecting protein-protein interactions. The RIME protocol is gaining popularity because of its unique advantages over the other methods. This article covers what RIME is and how it works, and provides tips to researchers that want to get started with RIME.

Read More

<< Back to MOTIFvations Blog Home Page