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ABBS –DNAメチル化をゲノムワイドに1塩基の解像度でマッピングする新しい方法

ABBS
 

By Benjamin Delatte

July 11, 2022

はじめに

シトシンの5番目の炭素 (C) がメチル化され、5-メチルシトシン (5-mC) になることは、哺乳類において圧倒的に多いエピジェネティック修飾です。そのため、100年近く前に発見されて以来、大きな関心を呼んでいます (Johnson & Coghill, JACS, 1925)。哺乳類では、DNAメチル化酵素 (DNMTs) を介したプロセスにより、主にグアニンが続くシトシン (CGまたはCpG) 上でシトシンDNAメチル化が起こります。このエピジェネティックマークは、遺伝子発現の制御に重要です。例えば、遺伝子プロモーターに濃縮された場合、シトシンメチル化は一般的に遺伝子サイレンシングに関連しますが、Gene Bodyに見られるメチル化は転写活性の上昇に関連します(Yang et. al., Cancer cell, 2014)。また、DNAメチル化はエンハンサーや反復配列などのゲノム領域にも見られ、その調節不良はがんなどの多くの疾患に関与していると考えられています (Yang et. al., Cancer cell, 2014)。 そのため、5-mCの分布を理解することは多くの科学者が取り組むべき課題であり、5-mCをゲノム全体にマッピングする手法が数多く開発されてきました。

5-mCマッピングのための濃縮法

5-mCのマッピングは、メチル化DNA断片をどのように濃縮して捕捉するかに依存します。一般的な濃縮法として、Methyl DNA Immunoprecipitation followed by deep-sequencing (MeDIP-seq, Down et. al., Nature Biotech, 2008) という方法があります。MeDIP-seqは、一本鎖DNA上の5-メチルシトシン (5-mC) を特異的に認識する抗体を用いて、メチル化DNA断片を捕捉します。Methylated-CpG Island Recovery Assay (MIRA) は、メチル化DNAに対するMBD2b-MBD3L1複合体の高い親和性を利用した方法で、5-mCマッピングに広く用いられるもう一つの方法です (Rauch et. al., Lab. Invest., 2005)。これらのアプローチには、それぞれ長所と短所があります。MeDIP-seqでは、単一の5-mCを認識する抗体を用いるため、メチル化密度の影響をほとんど受けません。一方、MBD2b-MBD3L1複合体はメチル化密度によって親和性が変化するため、低、中、高メチル化密度断片の領域を特異的に濃縮することが可能でです。しかし、MIRAはゲノム全体のすべてのCpGジヌクレオチドにおけるメチル化を評価しているわけではありません (Jung et. al., Epigenomics, 2015)。

濃縮法は一般的に安価ですが、正確なメチル化率ではなく、一般的なメチル化レベルを決定することにより、半定量的な情報しか得られない点がデメリットです。また、5-mCの検出分解能にも限界があり、捕捉するDNA断片のサイズ (通常100-300ヌクレオチドの間) に依存します。そのため、1塩基の分解能が必要な場合や、正確なメチル化レベルの判定が必要な場合は、他のアプローチをとる必要があります。

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バイサルファイト法による5-mCのマッピング

バイサルファイトシーケンスは、コストはかかるものの、シトシンのメチル化を1塩基の分解能で定量することができる方法です。1970年代、バイサルファイトナトリウム (亜硫酸ナトリウム) はシトシンに対して変異原性を示すが (Hayatsu et. al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1970)、5-メチルシトシンに対しては変異原性を示さない (Wang et al., NAR, 1980) ことが見出されました。DNAをバイサルファイトナトリウムで処理すると、メチル化されていないシトシンがウリジンに脱アミノ化され、サンガーシーケンスではチミジンと読み取られます。一方、5-メチルシトシンはバイサルファイト処理において脱アミノ化されず、シトシンとして読み取られます (Frommer et. al., PNAS, 1992)。次世代シーケンサーの出現により、Salk研究所のJoe Eckerらによって、Whole Genome Bisulfite Sequencing (WGBS) と名付けられたハイスループットのバイサルファイトシーケンス法が開発され、5-メチルシトシンのゲノムワイドで1塩基分解能のマップが初めて作成されました (Lister et. al., Nature, 2009)。この画期的な研究は、その後のDNAメチル化分野における画期的な発見の礎となっています。

WGBSは5-mCマッピングのゴールドスタンダードになっていますが、DNAメチル化レベルを正確に決定するためにはゲノム全体を25倍以上カバーする必要があるため、そのコストは法外なものとなっていました。そこで、特定の領域のみを解析することで、5-mCマッピングのコストを下げる方法が考案されました。例えば、Reduced Representation Bisulfite Sequencing (RRBS) は、高CpG密度の領域のみにおけるDNAメチル化を測定します(Meissner et. al., NAR, 2005)。また、アレイベースのアッセイ (例えば、イルミナ社Infinium®) は、ハイブリダイズ法により関心領域を事前に選択し、解析します (Moran et. al., Epigenomics, 2016)。これらの戦略は、ゲノムのほんの一部をカバーするという代償を払って、5-mCマッピングのシーケンスコストを劇的に低下させています。

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Anchor-Based Bisulfite Sequencing (ABBS)法について

さらに既存の手法の限界を回避するために、DNAメチル化をゲノムワイドに安価に検出する新しい手法として、Anchor-based bisulfite sequencing (ABBS) が開発されました。ABBSはアクティブ・モティフが開発した新技術で、最近Communications Biologyに発表されました (Chapin et. al., Commun Biol., 2022)。この技術は、1塩基解像度を維持しながらコストを削減するために、DNAのメチル化領域にシーケンスを集中させることを中心としています。アンカープライマーが、バイサルファイト処理後の5-mC部位を特異的に標的とするように設計されているため、(5-mC欠失領域ではなく) メチル化ゲノム領域のメチル化レベルを優先的に測定することができるようになっています。MeDIP-seq、WGBS、RRBSとベンチマークしたところ、ABBSのアプローチは精度が高く (WGBSと同等)、メチル化領域でのシーケンスカバレッジが向上する (MeDIP-seqと同等) ことが判明しました。また、ABBSはメチル化されたシトシンの検出感度が高く、WGBSと比較してシーケンスコストを大幅に削減 (10倍以上) することが可能です。

ABBSは、手頃な価格のエンリッチメントベースの手法と、1塩基分解能のバイサルファイトシーケンスの両方の利点を生かしています。ABBSはMeDIP-seqとほぼ同じカバレッジを提供する一方で、1塩基分解能を有し、面倒な抗体によるプルダウンのステップを省略できるなど、既存の方法に比べて優れた方法です。ABBSは、関心領域がDNAのメチル化に富んだ領域に位置する場合、WGBSの代替となることもあります。しかし、一般的に5-mCがあまり多くない領域に焦点を当てる場合には、WGBSが好ましい場合があります。ABBSはまた、健常組織とがん組織の間のメチル化の違いを検出するために用いることができ、cell-free DNAについても良好に解析できています (未発表)。

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今後の展望

シトシンを修飾するエピジェネティックマークは、DNAメチル化だけではありません。Ten-eleven Translocation (TET) メチルジオキシゲナーゼは、5-mCを5-hydroxymethylcytosine (5-hmC) とさらに酸化できる重要な遺伝子発現制御因子です (Tahiliani et. al., Science, 2009; Ito et. al., Science, 2011)。5-hmCはプロモーターやGene bodyなどの制御領域に見出されており、遺伝子発現の制御に関与しています (for review, Delatte et. al., EMBO J, 2014)。5-hmCの存在量は5-mCレベルの約10分の1と少ないため、一般的には5-hmCのマッピングは困難です。ABBSは、修飾が起こる領域にシーケンスパワーを集中させることができるため、5-hmCの希少性はあまり高いハードルとはなりません。実際、ABBSの大きな利点は、修飾が希少であればあるほど、シーケンシングカバレッジが比例して増加するため、より安価になることです。そのため私たちは、ABBSプロトコルを用いることで、5-hmCをゲノム規模で安価に検出できるようになったことに興奮しています。さらに多くのDNA修飾が発見されれば、ABBSの新たな応用の可能性が出てきます。アンカープライマーに基づく戦略が、新たなシトシン修飾に拡張できるかどうかは、興味深いところです。

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About the author

Mike Covington

Benjamin Delatte

Benjamin Delatte, PhD, is a Staff Scientist, Epigenomics/Epitranscriptomics Group Leader at Active Motif. He obtained his PhD from Free University of Brussels (ULB) in Belgium before moving to San Diego for his postdoc. Ben is passionate about DNA modifications and the development of new techniques to map them genome-wide. When he is not in the lab, Ben loves hiking with his dog and binge-watching series on Netflix!

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