ヒストン修飾解析はなぜ重要?
ヒストンにリン酸基、メチル基、アセチル基などの修飾を付加したり、除去したりすることは、転写の調節、染色体のパッケージング、DNA損傷修復に大きな影響を与えます。そのため、特定のヒストン修飾をスクリーニングすることは、細胞の健康状態や化合物の影響を評価するために重要です。アクティブ・モティフは、様々なヒストン修飾をハイスループットに定量可能なELISAキットを提供しています。薬剤処理などに応じて変化するヒストン修飾の測定などにご活用ください。
ヒストン修飾ELISAキット一覧 |
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製品の特長
アクティブ・モティフのヒストン修飾ELISAキットは、精製したコアヒストンまたは酸抽出により単離されたヒストンから、ヒストンH3修飾レベル変化のスクリーニングに使用できます。キットの特長は以下の通りです。
- 定量的 ー 簡単で正確な定量のための標準サンプルを含む
- ハイスループット ー ストリップウェルマイクロプレートを使用
- シンプル ー ELISAベースの比色アッセイで、特別な装置が不要
- 特異的 ー 他のヒストン修飾との交差反応性を検証済み
ヒストンバリアント
ヒストンテールの修飾に加えて、クロマチンを構成するヒストンタンパク質の特定のバリアントは、細胞の健康状態のエピジェネティックな指標として機能することがあります。
アクティブ・モティフのヒストン修飾ELISAキットの詳細は、以下の Documents, Backgroundまたは Publicationsのタブをクリックしてください。
ヒストン修飾とは?
ヒストンテール上の特定のアミノ酸残基におけるリン酸化、アセチル化、メチル化などのエピジェネティックな修飾は、転写、染色体パッケージング、DNA損傷修復などの核内のプロセスを制御する高次クロマチン構造に影響を与えます1。これらの特定のヒストン修飾の多くは真核生物全体で保存されています。一部のヒストン修飾の生物学的意義はまだ解明されていませんが、転写活性のような特定の細胞状態と密接に相関することが示されているものもあります2,3。
ヒストンメチル化
ヒストンメチル化は、アルギニンとリジンの残基上に起こる翻訳後修飾であり、PRMT1、SETドメイン、またはDOT1/DOT1Lタンパク質ファミリーに属するヒストンメチル化酵素によって触媒されます4。ヒストンのメチル化による転写活性化または抑制への影響は、メチル化部位と程度に依存します。ヒストンのリジンメチル化 は、ヒストンH3とH4のリジン残基上で、モノメチル, ジメチル、または トリメチルの状態で起こります。
ヒストンH3のK4、K36、またはK79のトリメチル化 (H3K4me3、H3K36me3、H3K79me3) は、一般的にオープンクロマチン形成と転写活性に関連しています。一方、ヒストンH3のK9またはK27のトリメチル化 (H3K27) およびヒストンH4のK20のトリメチル化 (H4K20me3) は、ヘテロクロマチン形成と転写抑制に相関しています。しかし、ヒストンのメチル化は永続的な状態ではありません。LSD1またはJmic (Jumonji domain-containing) ファミリーに属するヒストン脱メチル化酵素がメチル基を除去し、転写活性を変化させることができます。
ヒストンリン酸化
ヒストンリン酸化は、有糸分裂中にヒストンH3のセリン (Ser10、Ser28)、スレオニン (Thr3、Thr11) に発生する翻訳後修飾です5,6。ヒストンH3のテールで起こるS10とS28のリン酸化は、染色体が凝縮し始め、S期細胞で誘導される早期染色体凝縮の際に発生します。ヒストンH3は、S期後半またはG2期にSer10でリン酸化されますが、Ser28のリン酸化は間期では観察されず7、分裂期(M期)の前期に発生します7,8。Ser10とSer28のヒストンリン酸化は、有糸分裂を行う細胞にとって重要なマーカーであり、細胞周期中のヒストン修飾の重要性を示しています。
ヒストンアセチル化
ヒストンアセチル化は、ヌクレオソーム構造に影響を与える翻訳後修飾であり、この修飾が起こると、転写因子がDNAにアクセスし易くなり遺伝子発現を高めます。つまり、ヒストンアセチル化は、クロマチン内の重要なエピジェネティックなタグとして機能します。ヒストンアセチル化の増加は、緩んだクロマチン構造(オープンクロマチン)と活発な遺伝子転写に関連している一方、ヒストンアセチル化の減少は、クロマチン構造の凝縮(クローズドクロマチン)によって転写抑制を引き起こし、転写因子がDNAにアクセスすることを制限します9。
ヒストンアセチル化は可逆的な過程であり、2つのスーパーファミリーの酵素がヒストンアセチル化に関与しています。ヒストンアセチル化酵素 (HAT) とヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) は、ヒストンにアセチル基を付加または除去する触媒作用を持っています。HATは、ヒストンテールのリジン残基をアセチル化する酵素です。ヒストンアセチル化におけるアセチル基の供給源はアセチル補酵素A(アセチルCoA)です。一部のHATは、基質として転写因子(例えばp53)や構造タンパク質(例えばα-チューブリン)などの非ヒストンタンパク質を対象にすることもあります。HDACは、ヒストンからアセチル基を除去して補酵素Aに移すことができます。
サンドイッチELISAによるヒストンH3修飾解析
ヒストン修飾ELISAは、精製されたコアヒストンまたは酸抽出によって単離されたヒストンから特定のヒストン修飾の変化を、簡単かつ高感度で検出できる方法です。アクティブ・モティフは、ヒストン修飾抗体の作成における専門知識を駆使し、特定のヒストン修飾の検出に最適な抗体ペアを含むサンドイッチELISAのキットとして提供しています。これらのキットは、ヒストンH3に対するキャプチャー抗体と、標的の修飾に特異的な一次抗体を利用するサンドイッチELISAです。Horseradish peroxidase (HRP) 標識した二次抗体と基質溶液を用いることで、簡単に感度の高い比色定量が可能です。このキットは、ハイスループットのスクリーニングはもちろん、少量サンプルにも対応できる便利な96ストリップウェルプレートを採用しています。
各ヒストンメチル化ELISAには、アクティブ・モティフの特許技術により製造されたメチル化リコンビナントヒストンタンパク質が含まれており、各ヒストンアセチル化ELISAには、アセチル化されたリコンビナントヒストンタンパク質が含まれています。これらのリコンビナントタンパク質は、サンプルに含まれる特定の修飾されたヒストンH3の定量において標準物質として使用されるため、目的のヒストン修飾を定量的に評価することが可能です。詳しくは、リコンビナントヒストンおよび修飾ヒストンをご参照ください。Total Histone H3 ELISAには、未修飾のリコンビナントヒストンH3タンパク質が含まれています。ヒストンリン酸化ELISAには、ポジティブおよびネガティブコントロールとして、パクリタキセル処理済みおよび未処理細胞からの酸抽出物が含まれています。
ヒストン修飾ELISAの特長
- イムノブロッティング法に比べて感度が高い
- 組織または細胞サンプルから精製されたコアヒストンまたは酸抽出されたヒストンを使用可能
- 3時間未満で結果を得られる
- 特異的な抗体検出により、低バックグラウンドかつ他の修飾との交差反応がないことを検証済み
- 分光光度計による比色法 (450nm) で簡単かつ定量的な解析が可能
- 96ストリップウェル形式により、ハイスループットとロースループットの両方に対応可能
- 各キットにはポジティブコントロールが含まれる
References
- Bartova, E. et al. (2008) J. Histochemistry & Cytochemistry 56:711-721.
- Kirmizis, A. et al. (2004) Genes & Dev. 18:1592-1605.
- Squazzo, S. et al. (2006) Genome res. 16:890-900.
- Martin, C. & Zhang, Y. (2005) Nature 6:838-849.
- Preuss, U. et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:878-885.
- Bonenfant, D. et al. (2007) Mol. & Cellular Proteomics 6(11):1917-1932.
- Goto, H. et al. (1999) J. Biol Chem. 274(36):25543-25549.
- Hooser, A.V. et al. (1998) J. of Cell Science 111:3497-3506.
- Wang, L. et al. (1997) Mol. and Cell. Biol. 17(1):519-527.