KRAS In-well Lysis ELISA Kit

迅速に、感度良く、特異性が高い活性型KRAS測定キット

 

KRAS In-well Lysis ELISA Kitの概要

KRAS In-well Lysis ELISA Kit (1 plate)KRAS In-well Lysis ELISA Kit (1 plate)
KRAS In-well Lysis ELISA Kit (5 plates)KRAS In-well Lysis ELISA Kit (5 plates)
   
 

KRAS In-well Lysis ELISA Kitは、細胞溶解物中のKRAS活性化や阻害剤の効果をハイスループットで定量化することを目的に設計された、化学発光検出を用いたキットです。濃縮されたLysis Bufferを使用することで、洗浄や遠心分離なしに、96ウェル細胞培養プレートから直接アッセイすることができます。さらに、高度に特異的なヒトKRAS抗体を使用することで、他のアイソフォームとの交差反応を起こさずに活性型のKRASを検出します。試薬は多めに含まれているため、試薬リザーバーや自動マイクロプレート洗浄器などのハイスループット機器やマルチチャンネルピペッティングが利用可能です。

KRAS In-well ELISA Kitは、c-Rafキナーゼタンパク質のRAS結合ドメイン (Raf-RBD) が、活性化(GTP結合)したRASタンパク質のみに結合することを利用した、活性型KRASを検出するためのキットです。最初のステップでは、GST融合Raf-RBDタンパク質を96ウェルグルタチオンコーティングELISAプレートに結合させます。次に、活性型のRASを含む細胞に、5x Lysis Bufferを加えて培養ウェル内で直接細胞を溶解し、ELISAプレートに移します。そこで、GST-Raf-RBDに活性型のRASが結合します。KRASアイソフォームに特異的な一次抗体とホースラディッシュペルオキシダーゼ (HRP) 標識二次抗体を使って、活性型KRASを感度の高い化学発光法で定量します。

KRAS In-well ELISA Kitの特長

  • 短時間 – 濃縮したLysis Bufferを使用することで、培養中の細胞から培地を除くことなく溶解できるため、アッセイ時間を短縮
  • アイソフォーム特異的 – HRASやNRASと交差反応が少ないKRAS特異的なリコンビナント抗体を使用
  • ハイスループット適合 – 自動化装置や、マルチピペットの使用を想定した試薬量
  • 汎用性 – 細胞培養液に直接5x Lysis Bufferを加える方法と、細胞を洗浄した後に1x に希釈したLysis Bufferを加える2種類のプロトコル。5X Lysis Binding Bufferは、単品でも販売
  • サンプル量 – 2 x 104 - 32 x 104/well、5-50 µgの細胞抽出液

Ras GTPaseの背景

低分子量GTP結合タンパク質のRASは、GTPに結合する状態とGTPを加水分解してGDP結合型の2つの状態を持つことで、分子スイッチとして機能することができます。活性型(GTPに結合している)と不活性型(GDPに結合している)を遷移し、細胞の増殖、分化、アポトーシスなどの細胞機能に関与するシグナル伝達経路を調節しています。RASタンパク質には、HRAS、NRAS、KRASの3つの主要なアイソフォームが存在し、それぞれ約190個のアミノ酸を含んでおり、80〜90%の配列同一性を有しています。

RAS遺伝子は、がんにおいて最も頻繁に変異する遺伝子の1つです。KRAS、NRAS、HRASのコドン12、13、61におけるがん原性を促進するミスセンス変異は、ヌクレオチドの高速な交換反応、またはGAP(GTPase活性化タンパク質)結合の障害により、GTP結合の状態になります。RAS変異はすべて活性化しますが、異なる組織での発生頻度やがん原性には違いがあり、KRAS変異が最も一般的です。多くの研究者がアイソフォーム固有の治療薬を探索しているため、KRAS In-well Lysis ELISAキットは、KRASアイソフォームに高い特異性を持つように設計されています。

Flow Chart of KRAS In-well Lysis ELISA Kit
Flow Chart of KRAS In-well Lysis ELISA Kit

(Click image to enlarge)

 

KRAS In-well Lysis ELISA Kitの構成品

KRAS In-well Lysis ELISA Kitはドライアイスで出荷されますが、保管温度は構成品によって異なります。到着後は、すべての試薬の受領を確認し、以下に示す適切な温度で保管するようお願いします。キットは、すべての構成品が適切に保管された場合、6ヶ月間保証されます。

  Cat No. 52100 Cat No. 52105 Cat No. 52110 Storage
Reactions 96 5 x 96    
GST-Raf-RBD 110 µl 5 x 110 µl   -80°C
Positive Control Extract (AsPC-1) 42 µl 5 x 42 µl   -80°C
Recombinant KRAS Antibody 15 µl 44 µl   -20°C
Anti-rabbit HRP-conjugated IgG 15 µl 15 µl   -20°C
Protease Inhibitor Cocktail (PIC) 2 x 105 µl 1.2 ml 1.2 ml -20°C
5X Lysis Binding Buffer 4 ml 22 ml 22 ml 4°C
10X Wash Buffer AM2 2 x 25 ml 2 x 125 ml   4°C
10X Antibody Binding Buffer AM2 2.5 ml 12.5 ml   4°C
Chemiluminescent Reagent 2 ml 10 ml   4°C
Reaction Buffer 4 ml 20 ml   4°C
96-well assay plate 1 ea 5 ea   4°C
Plate sealer 2 ea 10 ea   4°C


 

KRAS In-well Lysis ELISA Kitのデータ

KRAS western blot

図 1. KRAS In-well Lysis ELISA Kitで使用されるリコンビナントKRAS抗体の、ヒトKRASに対する特異性
ウェスタンブロットにより、Pan-RAS抗体 (ProteinTech, Cat.No.60309-1-Ig) またはKRAS In-well Lysis ELISA Kitで提供されるアクティブ・モティフのリコンビナントKRAS抗体を使用して、リコンビナントヒトHRAS、KRAS、およびNRASアイソフォームに対する反応性を比較した。一次抗体は1 µg/mlの濃度で使用。以下のリコンビナントタンパク質を100 ngずつロードした:ヒトHRAS (2-186, G12V)、ヒトKRAS (2-185, G12C/Q61H)、ヒトNRAS (1-186、WT) (Creative Biomart, Cat#HRAS-228H, Cat#KRAS-457H, Cat#NRAS-447H)


Median Fluorescence Intensity Figure A
Median Fluorescence Intensity Figure B

図2. KRAS In-well Lysis ELISA Kitを使用した、AsPC-1細胞内の活性型KRAS量の変化
A: AsPC-1細胞は、KRAS-G12D変異を発現するヒト膵臓がん由来の細胞。 A: AsPC-1細胞を96ウェル培養プレートに2倍の希釈系列で640,000細胞/ウェルから始め段階的に希釈して、2日間培養した。各ウェルに25µlの5X Completet Lysis Binding Bufferを加え、氷上で15分間インキュベーションすることでウェル内で細胞を溶解した。その後、50 µlの細胞溶解物をRaf-RBDでコーティングされたELISAプレートに移し、KRAS In-well Lysis ELISAプロトコルに従って実験を行った。プレートはCLARIOstarプレートリーダー (ISOGEN Life Science) を使用して、発光モード、ゲイン設定2700で読み取った。
B: AsPC-1細胞を96ウェル培養プレートに2倍希釈系列で160,000細胞/ウェルから始め、2日間培養した後、33 nMのMRTX 1133(選択的KRAS-G12D阻害剤、Cayman Chemical)で3時間処理した。各ウェルに25 µlの5X Complete Lysis Binding Bufferを加え、氷上で15分間インキュベーションし、細胞を溶解した。その後、50 µlの細胞溶解物をRaf-RBDコーティングされたELISAプレートに移し、KRAS In-well Lysis ELISAプロトコルに従って実験を行った。プレートはCLARIOstarプレートリーダー (ISOGEN Life Science) を使用して、発光モード、ゲイン設定3000で読み取った。

 


IC50 of MRTX1133 inhibition of active KRAS-G12D

図3. KRAS In-well Lysis ELISAキットを用いたAsPC-1細胞の細胞溶解物中の活性型KRAS-G12DのMRTX1133による阻害効果 (IC50)
3.2 x 105個のAsPC-1細胞を96ウェルプレートに培養して48時間後、異なる濃度のMRTX1133(選択的なKRAS-G12D阻害剤、Cayman Chemical)で3時間処理し、KRAS In-well Lysis ELISAキットプロトコルに従って、各4つの重複アッセイを行った。AsPC-1細胞は、KRAS-G12D変異を発現するヒト膵臓がん由来細胞株である。


Increasing active KRAS signal

図4. ポジティブコントロールであるAsPC-1細胞の全細胞抽出物の量を増加させて、活性型KRASのアッセイウィンドウを確認
AsPC-1細胞から、KRAS In-Well Lysis ELISAプロトコルに従って全細胞抽出物を調製した。細胞抽出物中のタンパク質量はPierce BCA Protein Assay Kitを用いて定量し、1X Lysis Binding Bufferで希釈した。グラフは、アッセイに使用したタンパク質量を横軸に、縦軸には各サンプルのKRASの活性 (RLU) とアッセイウィンドウ(シグナル/バックグラウンド比)をオレンジの数値で示した。


Detection of active KRAS in human tumor samples

図5:ヒト腫瘍組織中の活性型KRASの検出
ヒト腫瘍を移植したマウスに対して、20 mg/kgのKRAS G12C阻害剤AMG-510、もしくはコントロールを導入し、その後、腫瘍組織を切り出し、瞬間凍結した。5-10 mgの腫瘍サンプルをCovaris Cryo Prepシステムを用いて粉末化し、200 μlの1X Lysis Binding Bufferと混合した。腫瘍溶解液を15,000 x gで10分間、4℃で遠心分離した。上清をクライオチューブに移し、-80 ℃で保存した。タンパク質濃度の測定には、BCAアッセイを使用した。25 μgの腫瘍溶解液をKRAS ELISAプレートの各ウェルに添加して測定を行った。

 

KRAS In-well Lysis ELISA KitのFAQ

凍結した細胞を利用できますか?

理想的な結果を求めるのであれば、新鮮なサンプルを用いることをおすすめします。凍結融解を繰り返すことにより、実験の効果を弱くしてしまう可能性があります。もし凍結したサンプルしか得られない場合、細胞溶解液を調製するときに、Complete Lysis Bufferを使うことをおすすめします。細胞抽出液は、分注して-80℃に保管し、凍結融解を避けてください。

KRAS抗体は、KRAS変異体も検出可能ですか?

リコンビナントKRAS抗体は、KRAS In-well Lysis ELISA KitでKRAS G12D変異を持っているAsPC-1細胞株中のKRASの活性を測定できることを確認しています。さらに、リコンビナントKRAS抗体は、KRAS G12C, Q61H変異体に反応することをWestern Blotで確認しています。他の変異については、個別には検証していません。ほとんどのKRAS変異体に使用できることが予想されますが、残念ながら現状では、他の変異体についてはELISAでは検証されていません。

キットでは、何をコントロールとすればよいですか?

KRAS活性測定のポジティブコントロールとして、AsPC-1細胞抽出液が使用できます。キットには、96-wellあたり、4反応分のAsPC-1細胞抽出液が同梱されています。この抽出液は、10 ul/wellで強いシグナル (>10x assay window) を得ることができます。

 

KRAS In-well Lysis ELISA Kitの資料

 

日本語チラシはこちら


こちらもご参照ください

 
Name Format Cat No. Price  
KRAS In-well Lysis ELISA Kit 1 x 96 rxns 52100 ¥205,000 Buy
5 x 96 rxns 52105 ¥840,000 Buy
5X Lysis Binding Buffer 20 ml 52110 ¥78,000 Buy